足関節捻挫は、スポーツや日常生活で起こりやすい怪我の一つです。捻挫直後の適切な処置が、回復のスピードや後遺症の有無に大きく影響します。そこで、今回は、捻挫直後に行うべきRICE処置について詳しく解説します。
RICE処置とは?
RICEとは、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字を取ったもので、捻挫などの急性外傷に対して行う応急処置の4つのステップを指します。これらの処置を適切に行うことで、腫れや痛みを軽減し、回復を早める効果が期待できます。
1. Rest(安静)
- 患部を休ませる: 捻挫した足に体重をかけたり、激しい運動をしたりしないようにしましょう。
- 患部を固定する: サポーターや包帯などで患部を固定し、動きを制限します。
2. Ice(冷却-アイシング)
- 冷却効果: 氷嚢やアイスパックを直接肌に当て、15~20分程度冷やします。1時間休んだら再度行いましょう。
- 皮膚感覚がなくなるまで行う:しっかりと疼痛抑制するまで15~20分程かかります。
- 血管収縮: 冷却することで血管が収縮し、腫れや痛みを軽減します。
アイシングで二次的低酸素症を防ぐ
ケガをした時にアイシングをするのは、ただ冷やすだけでなく、大切な理由があります。それは、二次的低酸素症という状態を防ぐためです。
二次的低酸素症とは?
ケガをした部分だけでなく、その周りの細胞も酸素が不足してしまい、さらなるダメージを受けてしまうことです。
アイシングでどう防ぐの?
アイシングをすることで、
- 患部の温度を下げる
- 血管を収縮させる
- 細胞の活動を抑える
といった効果が得られます。これにより、酸素の消費量が減り、周りの細胞へのダメージを最小限に抑えることができるのです。
アイシングは、ケガをした直後の応急処置として非常に重要です。冷やすことで、腫れや痛みを軽減するだけでなく、二次的なダメージを防ぎ、回復を早める効果が期待できます。
なぜアイシングで痛みが軽減されるのか?
アイシングが疼痛抑制効果を持つ理由は、主に以下のメカニズムが考えられます。
- 神経伝達速度の低下: 冷却によって、神経の伝達速度が低下します。これにより、痛みの信号が脳に伝わる速度が遅くなり、結果的に痛みが軽減されます。
- 炎症反応の抑制: アイシングは、患部の血管を収縮させ、炎症反応を抑えます。炎症反応は痛みを引き起こす主な原因の一つであるため、炎症を抑えることで痛みも軽減されます。
- 筋肉の緊張緩和: 冷却により、筋肉の緊張が緩和されます。筋肉の緊張は痛みを増強させるため、緊張を緩和することで痛みを軽減することができます。
3. Compression(圧迫)
- 弾性包帯: 弾性包帯で患部を圧迫することで、腫れを軽減し、出血を止める効果があります。
- 注意: 締めすぎると血流が悪くなるため、適度な圧迫が大切です。
4. Elevation(挙上)
- 心臓より高い位置: 患部を心臓よりも高い位置に上げることで、血液の循環を妨げ、腫れを軽減します。
- クッション: クッションなどを利用して、足を高くして休ませましょう。
RICE処置の効果
- 腫れの軽減: 血管収縮、圧迫、挙上により、組織への出血が抑えられ、腫れが軽減されます。
- 痛みの軽減: 冷却効果と圧迫効果により、痛みを和らげます。
- 炎症の抑制: 冷却により炎症反応を抑え、回復を促進します。
RICE処置の注意点
- 冷却のしすぎ: 冷やしすぎると凍傷になる恐れがあるため、注意が必要です。
- 圧迫のしすぎ: 締めすぎると血流が悪くなり、かえって症状を悪化させる可能性があります。
- 自己判断: 症状が重い場合や、痛みが続く場合は、必ず医師に相談しましょう。
いつまで続けるべき?
一般的には、腫れや痛みが引くまでRICE処置を続けます。しかし、個人差がありますので、医師の指示に従うことが大切です。
足関節捻挫の解剖学的グレード(重症度)
足関節捻挫は、足首の関節を構成する靭帯が損傷する怪我です。その損傷の程度によって、解剖学的グレード(重症度)が3つに分けられます。
1. Ⅰ度捻挫
- 靭帯の損傷: 靭帯がわずかに伸びる程度の軽度の損傷です。
- 症状: 軽度の痛み、腫れ、圧痛が見られますが、日常生活に大きな支障はありません。
- 治療: RICE処置(安静、冷却、圧迫、挙上)とサポーター固定などで、数日で症状が改善することが多いです。
2. Ⅱ度捻挫
- 靭帯の損傷: 靭帯が部分的に断裂する中等度の損傷です。
- 症状: 強い痛み、腫れ、圧痛、関節の不安定感などがみられます。歩行は可能ですが、痛みを伴うことがあります。
- 治療: RICE処置に加え、ギプス固定やサポーター固定を行い、数週間の安静が必要になる場合があります。
3. Ⅲ度捻挫
- 靭帯の損傷: 靭帯が完全に断裂する重度の損傷です。
- 症状: 激しい痛み、腫れ、圧痛、関節の著しい不安定感が見られます。歩行が困難な場合もあります。
- 治療: RICE処置に加え、手術が必要となる場合もあります。手術では、断裂した靭帯を修復したり、再建したりします。
各グレードの特徴を比較
グレード | 靭帯の損傷 | 症状 | 治療 |
---|---|---|---|
Ⅰ度 | わずかに伸びる | 軽度の痛み、腫れ | RICE処置、サポーター固定 |
Ⅱ度 | 部分的に断裂 | 強い痛み、腫れ、関節の不安定感 | RICE処置、ギプス固定 |
Ⅲ度 | 完全断裂 | 激しい痛み、腫れ、関節の著しい不安定感 | RICE処置、手術 |
捻挫のグレードと治療期間
捻挫の治療期間は、損傷の程度によって大きく異なります。
- Ⅰ度捻挫: 数日から数週間
- Ⅱ度捻挫: 数週間から数ヶ月
- Ⅲ度捻挫: 数ヶ月以上
足関節捻挫後のリハビリテーション手順
足関節捻挫後のリハビリテーションは、捻挫の程度や個人の回復状況によって異なります。一般的に、以下の様な段階を踏んで行われます。
1. 急性期(捻挫直後~2週間)
- RICE処置: 引き続き安静、冷却、圧迫、挙上を行います。
- 保護: サポーターやギプスで患部を固定し、再損傷を防ぎます。
- 痛みと腫れの軽減: 冷罨法、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが用いられます。
2. 回復期(2週間~)
- 固定の解除: 症状が落ち着いたら、徐々に固定を解除していきます。
- 関節可動域運動: 足首の関節の動きを少しずつ回復させていきます。
- 筋力強化: 足首周りの筋肉を強化し、関節の安定性を高めます。
- バランス訓練: 体幹の安定性とバランス感覚を養います。
3. 機能回復期
- スポーツ動作の練習: 自分のスポーツに合わせた動作を練習し、復帰を目指します。
- Proprioception(体性感覚)の回復: 自分の体の位置や動きを感覚で捉える能力を回復させます。
具体的なリハビリテーションの例
- 足首のアルファベット運動: 足首をアルファベットを描くように動かす運動です。
- タオルギャザー: タオルを足でつかんで寄せる運動で、足指の細かい動きを促します。
- 片足立ち: バランス感覚を養うための運動です。
- カーフレイズ: ふくらはぎの筋肉を強化する運動です。
- チューブトレーニング: 足首の安定性を高めるための運動です。
リハビリテーションの注意点
- 無理のない範囲で行う: 痛みを感じたら、すぐに中止しましょう。
- 定期的な受診: 医師や理学療法士の指示に従い、定期的に受診しましょう。
- 再発防止: リハビリ終了後も、ストレッチや運動を継続し、再発を防ぎましょう。
リハビリテーションの効果
- 痛みの軽減: 腫れや炎症が軽減され、痛みも和らぎます。
- 関節可動域の改善: 足首の動きがスムーズになります。
- 筋力強化: 足首周りの筋肉が強化され、関節の安定性が向上します。
- バランス感覚の改善: 体幹の安定性とバランス感覚が向上し、スポーツ復帰に役立ちます。
リハビリテーション期間
リハビリテーション期間は、捻挫の程度、個人の回復力、年齢などによって異なります。一般的には、数週間から数ヶ月かかります。
まとめ
足関節捻挫後のリハビリテーションは、早期回復と再発予防のために非常に重要です。医師や理学療法士の指示に従い、計画的にリハビリテーションを行うことで、日常生活やスポーツ活動にスムーズに戻ることができます。
足を捻ってしまったら、是非高崎スポーツ整骨院へお越しください。
整形外科クリニックで身に付けた急性期対応の技術と知識で早期回復を行います。
是非お気軽にお問合せ下さいませ。